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前橋地方裁判所 昭和45年(行ウ)6号 判決

群馬県吾妻郡長野原町大字応桑一九二四番地

原告

神戸朝雄

右訴訟代理人弁護士

木村賢三

同県同郡中之条町大字中之条六六四番地の一

中之条税務署長

被告

小沼春男

右指定代理人

小沢義彦

三宅康夫

平野恒夫

天笠荘二

杉山昭吾

臼田年夫

主文

一、原告の請求をいずれも棄却する。

二、訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当時者の求めた裁判

一、原告の請求の趣旨

1  被告が原告に対して昭和四四年四月一六日付でした昭和四一年分の所得税の額を四六五万四〇〇〇円(異議申立による決定により四三〇万二〇〇〇円に減額)とする更正処分のうち二〇万二六七〇円を超える部分を取消し、過少申告加算税一万九五〇〇円(右決定により一万七〇〇〇円に減額)及び重加算税一二一万八〇〇〇円(右決定により一一二万七四〇〇円に減額)の各賦課決定をいずれも取消す。

2  被告が原告に対して昭和四四年四月一六日付でした昭和四二年分の所得税の額を三七四万一八〇〇円とする更生処分のうち八二万九六〇〇円を超える部分を取消し、重加算税八七万三六〇〇円の賦課決定を取消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告の請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二、当事者の主張

一  原告の請求の原因

1  本件各処分の経緯等

(一) 原告は造園業を営むとともに別荘地の分譲転売の業務を行なつていた者である。

(二) 原告は被告に対し、昭和四四年一月二五日、昭和四一年分の所得金額を一四六万四二四〇円、所得税の額を二〇万二六〇〇円、昭和四二年分の所得金額を三三六万七三〇六円、所得税の額を八二万九六〇〇円とする修正確定申告をした。

(三) 被告は原告に対し、昭和四四年四月一六日付で、昭和四一年分の所得金額を一一三一万五八三六円、所得税の額を四六五万四〇〇〇円とする更正決定と過少申告加算税を一万九五〇〇円、重加算税を一二一万八〇〇〇円とする賦課決定をし、昭和四二年分の所得金額を九五六万一〇〇〇円、所得税の額を三七四万一八〇〇円とする更正決定と重加算税を八七万三六〇〇円とする賦課決定をした(以下各更正決定を「本件各更正決定」、過少申告加算税と各重加算税の賦課決定を「本件各賦課決定」という。)

(四) 原告は被告に対し、昭和四四年五月一五日、本件各更正決定及び本件各賦課決定について異議の申立をしたところ、被告は、同年一〇月二日付で、昭和四一年分の更正決定及び賦課決定については、その一部を取消して所得金額を一〇六七万六五一六円、所得税の額を四三〇万二〇〇〇円、過少申告加算税を一万七〇〇〇円、重加算税を一一二万七四〇〇円とする決定をし、昭和四二年分の更正決定及び賦課決定に対する異議については棄却する旨の決定をした。

(五) そこで、原告は関東信越国税局長に対し、昭和四四年一一月一日、右各決定について審査請求をしたが、同国税局長は、昭和四五年三月二〇日付で、右各請求を棄却する旨の裁決をした。

2  本件各処分の違法事由

しかしながら、被告がした本件各更正決定(昭和四一年分については異議決定により減額された金額。以下同じ。)のうち、各修正確定申告の所得金額を超える部分は、いずれも原告の所得を過大に認定したものであるから、各修正確決申告の所得税の額を超える部分は違法であり、また、本件各更正決定を前提としてされた本件各賦課決定(昭和四一年分については異議決定により減額された金額)も違法である。

よつて、請求の趣旨記載の処分の取消しを求める。

二、被告の請求の原因に対する認否

請求の原因1は認めるが、同2は争う。

三、被告の抗弁

1  本件各更正決定の根拠

(一) 原告は、昭和四一、四二年において造園業を営むとともに無免許で別荘地の分譲及び転売をしていたが、各年度とも造園業に係る所得を確定申告しただけであつた。

(二) 被告は、昭和四三年ころ、原告が北軽井沢地区に別荘地約二万二〇〇〇坪を造成して昭和四一年一一月ころから分譲したり、同地区に約一万三〇〇〇坪の土地を購入して同年二月に転売した事実を知つたので、その取引関係書類の提示を求めたところ、原告は昭和四二年分については造園業関係のみの領収書及び売上帳を提示したものの、昭和四一年分については造園業関係の領収書すら大部分は保存しておらず、売上帳も同年五月以前の取引は記帳していなかつたので、右事業の全部の資料の提示は受けられなかつた。そこで、被告は取引先について反面調査をして別荘地の買受価額をもつて収入金額とし、また、買受価額から販売原価及び営業費用を推計し、これらを原告の造園業に係る収入金額と経費の金額に加算し、事業所得の金額等を算出して本件各更正決定をしたものである。

(三) 昭和四一年分の所得

昭和四一年分の所得金額は、全部事業所得で、別表1のとおり一〇八三万一三六〇円である。その算出の根拠は次のとおり一〇八三万一三六〇円である。その算出の根拠は次のとおりである。

(ア) 造園業収入 二五六万八六五〇円

原告の昭和四一年分(六月以降)の売上帳の記帳額をもつて収入金額とした。

(イ) 別荘地分譲収入 一八五三万三〇〇〇円

昭和四一年に原告から別荘地を買い受けた者の買受価額をもつて収入金額とした。その内訳は別表2のとおりである(値引がされている場合は値引後の金額を買受価額とした。)

(ウ) 別荘用地転売収入 一三〇〇万円

原告は昭和四一年二月二八日千代田興業株式会社(以下「千代田興業」という。)に群馬県吾妻郡長野原町大字応桑一六〇七番四山林四万二九六一・九八平方メートル(以下「本件山林」という。)を代金一三〇〇万円で転売したので、右転売代金をもつて収入金額とした。

(エ) 造園業関係販売原価 七七万一〇〇〇円

原告の営業の実態が昭和四一年と昭和四二年とでほとんど差異が認められないので、昭和四二年分の造園業関係販売原価率(造園業収入金額のうちに占める販売原価の割合)三〇パーセント(少数点以下を切り上げた。)を昭和四一年分の造園業収入金額に乗じて販売原価を算出した(一〇〇〇円未満の端数は切り上げた。)。販売原価率及び販売原価の算式は次のとおりである。

〈省略〉

昭和41年の造園業関係販売原価の額=昭和41年の造園業収入金額×昭和42年の

造園業関係販売原価率=2,568,650×30=770,595

(オ) 別荘地分譲関係販売原価八七〇万三六九四円(土地の取得価額と造成費用の合計額)

(a) 土地の取得価額 六二六万二〇〇〇円

分譲別荘地は、売主の横沢啓太郎と買主の原告との間で、その売買代金の支払方法として別荘地を第三者に譲渡したときに、原告が横沢啓太郎に坪当り一〇〇〇円を支払うと約束がされ、そのとおり履行されているので、原告の昭和四一年中の別荘地分譲面積二万〇七〇〇・七五平方メートル(六二六二坪)に坪単価一〇〇〇円を乗じて分譲別荘地の取得価額とした。算式は次のとおりである。

土地の取得価額=分譲地積(坪)×単価=6,262×1,000

=6,262,000

(b) 造成費用 二四四万一六九四円

別荘地の造成に要した費用は別表3のとおりである。

(カ) 別荘用地転売関係販売原価一一六六万〇九二六円(土地の取得価額と造成費用の合計額)

(a) 土地の取得価額 八七三万〇二七六円

本件山林を原告に譲渡した長野原町応桑第九区(代表者浅井政雄)の譲渡価額八五〇万円をもつて原告の買入価額とした。また、原告は、右代金の支払にあてるために、太陽銀行小諸支店から資金を借り入れ、転売までの利子として二三万〇二七六円を支払つていたので、右支払利子二三万〇二七六円を土地の買入価額に加算して合計額八七三万〇二七六円を土地の取得価額とした。

(b) 造成費用 二九三万〇六五〇円

原告保存の領収書を基礎とし、領収書のない部分については原告の申立てた額により計上した。その内訳は別表4のとおりである。

(キ) 営業費用三〇〇万八四七〇円(造園業関係と別荘地分譲関係の合計額)

(a) 造園業関係の営業費用 一八五万円

原告の営業の実態が昭和四一年と昭和四二年とでほとんど差異が認められないので、昭和四二年分の造園業関係営業経費率七二パーセント(少数点以下を切り拾てた。)を昭和四一年分の造園業収入金額に乗じて算出した(一〇〇〇円未満の端数は切り上げた。)。営業経費率及び営業費用の額の算式は次のとおりである。

〈省略〉

昭和41年の造園業関係営業費用の額=昭和41年の造園業収入金額×昭和42年の造園業関係営業経費率=2,568,650×72=1,849,428

なお、昭和四二年の造園業関係営業費用の金額は、昭和四二年の営業費用の総額一二九八万九七一一円(後記(四)の(1)の(オ))から造園業関係以外の費用である仲介手数料一二三万円、接待交際費一六八万七一七五円及び広告宣伝費三二万六五五〇円を控除した九七四万五九八六円である。

(b) 別荘地分譲関係の営業費用 一一五万八四七〇円

原告の申立額のうち、広告宣伝費一八万七八六〇円は認容し、接待交際費は、原告申立の坪当り一五五円について検討し、右金額が分譲価額坪当り三〇〇〇円に対し五パーセント強となつており、不動産取引の際の市場一般の仲介料が五パーセントであることも考慮し、仲介料にかわるものとして原告申立額により計上した。算式は次のとおりである。

接待交際費=分譲地積(坪)×単価=6,262×115=970,610

なお、原告の申立てた仲介料については、仲介料を支払つている事実がなかつたので、経費には計上しなかつた。よつて、別荘地分譲関係の費用は広告宣伝費一八万七八六〇円と接待交際費九七万〇六一〇円を合計した一一五万八四七〇円である。

(c) 本件山林の転売については、原告は、仲介料等を支払つていないので、転売別荘用地の営業費用は計上しなかつた。

(ク) 雑収入 八七万四〇〇〇円

原告は、千代田興業が代金の支払を遅延したため、同会社から遅延利息として八七万四〇〇〇円の支払を受けているので、右金額を雑収入として計上した。

(四) 昭和四二年分の所得

昭和四二年分の所得金額は、事業所得金額一〇一八万五二七八円、給与所得金額四万八〇〇〇円及び雑所得金額二七〇〇円の合計額一〇二三万五九七八円である。

(1) 事業所得金額は、別表5のとおり一〇一八万五二七八円で、その算出の根拠は次のとおりである。

(ア) 造園業収入 一三五一万〇一九五円

原告作成の売上帳と原告の保存していた見積書、請求書控、領収書控とを照合し、さらに取引先の調査により工事収入金額を確認し、別表6のとおり原告記帳の収入金額とした。

(イ) 別荘地分譲収入 二八五二万四五〇〇円

昭和四二年に原告から別荘地を買い受けた者の買受価額をもつて収入金額とした。その内訳は別表7のとおりである(値引がされている場合は値引き後の金額を買受価額とした。)。

(ウ) 造園業関係販売原価 三九七万四〇四一円

原告作成の経費帳に一部計上洩れがあつたので、この計上洩れの金額を別表8のとおり加算して経費帳に基づき算出した。

(エ) 別荘地分譲関係販売原価一四八八万五六六五円(土地の取得価額と造成費の合計額)

(a) 土地の取得価額 一〇八八万五〇〇〇円

土地の取得価額は、前記(三)の(オ)の(a)と同様に、昭和四二年中の分譲面積三万五九九三・三九平方メートル(一万〇八八五坪)に坪単価一〇〇〇円を乗じて分譲別荘地の取得価額とした。算式は次のとおりである。

土地の取得価額=分譲地積(坪)×単価=10,885×100

=1,088,500

(b) 造成費用 四〇〇万〇六六五円

分譲した別荘地の造成に要した費用は別表9のとおりである。

(オ) 営業費用 一二九八万九七一一円

営業費用の内訳は別表10のとおりである。別表10の順号〈1〉の仲介手数料については、昭和四二年に原告が安斉友義外一名について支払つた別表11の合計額を計上した。

(2) 給与所得金額は四万八〇〇〇円で、原告の申告額により計上した。

(3) 雑所得金額は二七〇〇円で、その算出の根拠は次のとおりである。

原告は、昭和四二年中に太陽銀行小諸支店から借り入れた金員のうち、五〇〇万円を栃原彰に貸付け、同年中に同人から二一万二七〇〇円を右貸付金の利息として受領した。原告の右貸付は、原告の事業とはなんら関係なしに行われていたので、右利息収入二一万二七〇〇円は雑所得の収入金額とし、原告が太陽銀行小諸支店に支払つた利息二一万円を必要経費として控除し、その残額二七〇〇円を雑所得として計上した。

2  本件各賦課決定の根拠

原告は、別荘地の分譲について真正な契約書を作成せず、横沢啓太郎が直接分譲したように仮装して実際の売却金額が坪当り三〇〇〇円であるにもかかわらず、六〇〇円で計算した契約書を作成するとともに、右別荘地の造成及び分譲費用の領収書も破棄して分譲による所得を陰ぺいし、陰ぺいしたところに基づいて確定申告書を提出し、さらに被告の右所得金額の調査に際しては、仮空の経費を申立てるなどして所得を陰ぺいしたので、原告の右行為が国税通則法六八条一項に該当し、昭和四一年分の所得税については更正にかかる所得税のうち、別荘地分譲による所得に対応する部分の税額三七五万八〇〇〇円に対し、また昭和四二年分については更正にかかる所得税額二九一万二二〇〇円に対しそれぞれ一〇〇分の三〇の割合による重加算税を賦課決定したものである。

四、原告の抗弁に対する認否

1  抗弁1の(一)は認はる。

2  同1の(二)のうち、原告が約一万三〇〇〇坪の土地を購入し昭和四一年二月に転売したことは認めるが、被告が反面調査をしたことは不知、その余の事実は否認する。

3  同1の(三)の冒頭記載部分は否認する。(ア)は不知。(イ)のうち、別表2の順号〈3〉ないし〈8〉、〈10〉ないし〈13〉の欄はすべて、〈1〉、〈2〉、〈9〉、〈14〉の欄の買受人氏名、契約金額及び地積は認めるが、その余は否認する(昭和四一年の別荘地分譲については別表ののとおりである。)。(ウ)のうち、本件山林の転売の事実は認めるが、収入金額が一三〇〇万円であることは否認する(原告は千代田興業から売買代金は手形で支払われ、この手形を現金化するために割引いた際に、割引料として一四万二三二〇円を差引かれているから、収入金額は右金額を売買代金から差引くべきである。)。(エ)は否認する。(オ)は認める。(カ)の(a)は否認する(原告は長野原町応桑第九区に売買代金八五〇万円の外に水利権料と思われる一〇〇万円を支払つているから、本件山林の買入価額は少くとも九五〇万円である。)。(b)は認める。(キ)は否認する(原告は別表12のとおり仲介手数料の支払をしているから、これを経費として認めるべきである。)。(ク)は認める。

4  同1の(四)及びその(1)の各冒頭記載部分並びに(1)の(ア)は否認する。(イ)のうち、別表7の順号〈2〉、〈6〉、〈7〉、〈10〉、〈12〉、〈14〉、〈16〉の欄はすべて、〈1〉、〈3〉ないし〈5〉、〈8〉、〈9〉、〈13〉の欄の買受人氏名、契約金額及び地積並びに〈11〉の欄の買受人氏名、値引額及び地積は認めるが、その余は否認する(昭和四二年の別荘地分譲については別表13のとおりである。)。(ウ)は認める。(エ)の(a)は否認する。(b)は認める。(オ)のうち、別表10の順号〈1〉の仲介手数料の金額は否認するが、その余は認める(原告は別表13のとおり仲介手数料の支払をしているからこれを経費として認めるべきである。)。同1の(四)の(2)、(3)は認める。

5  同2は否認する。

第三、証拠

一、原告

1  甲第一ないし第三号証、同第四号証の一、二、同第五号証

2  証人江崎弘、同新居文作、同神戸博、原告本人

3  乙第三号証の二、同第九号証の一ないし六、同第一五号証の二、同第二五、二六号証の各成立は認める。同第一〇号証の一、二の成立は否認する。その余の乙号各証の成立は不知(同第二七、二八号証については原告名下の各印影が原告の印章によるものであることは認める。)。

二、被告

1  乙第一号証の一ないし一〇、同第二号証、同第三号証の一、二、同第四ないし第六号証、同第七号証の一ないし九、同第八号証、同第九号証の一ないし六、同第一〇号証の一、二、同第一一、一二号証、同第一三号証の一、二、同第一四号証、同第一五ないし第一八号証の各一、二、同第一九ないし第二八号証

2  証人浅川忠良、同柴崎昇三、同藤井一雄、同大塚弘、同横沢啓太郎、同坪木喬、同浦部治郎、同兼形進、同田中英男、同勅使河原光治、同大塚俊男、同小高佐太郎

3  甲第一号証(但し「1/27~1/28屈ける」及び「小高さん」なる加入部分の成立は不知)及び同第四号証の一、二の各成立は認める。その余の甲号各証の成立は不知。

理由

一、請求の原因1(本件各処分の経緯等)については、当事者間に争いがない。

二、原告は、本件各更正決定のうち、各修正確定のうち、各修正確定申告の金額を超える部分は、いずれも被告が過大に認定したものであるから違法であり、また、本件各更正決定を前提としてなされた本件各賦課決定も違法である旨主張するので、以下判断する。

1  本件各更正決定及び昭和四一年分の過少申告加算税の賦課決定の根拠について

証人浅川忠良の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第一号証の九、一〇、並びに証人横沢啓太郎の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第六号証によれば、次のとおりの事実が認められる。

昭和四三年ころ、中之条税務署職員の浅川忠良は、横沢啓太郎の所得を調査したところ、横沢啓太郎は第三者に対して昭和四一年ころから吾妻郡嬬恋地内の土地を坪六〇〇円で分譲した旨の多数の契約書を提示したが、同人の供述から、同人は昭和四一年三月ころ、同土地約一万八四〇〇坪を原告に譲渡し、原告がこれを別荘地に造成して分譲したものであり、横沢啓太郎と原告は所得を隠ぺいするために、前記のような虚偽の契約書を作成したものであることが判明した。そこで、浅川忠良は、これを確めるために契約書に記載がある買受人の反面調査をしたところ、原告から坪三〇〇〇円で買い受けたとの回答を得、そして、同年八月には、原告方事務所で事務員から売上帳の提示を受け、同事務員から売上帳には横沢啓太郎が坪六〇〇円で別荘地を分譲した旨と符合させるために、同人が原告に坪二四〇〇円の造成工事費を支払つた旨の虚偽の記載をしてあるとの説明を受けたので、原告が別荘地を分譲している事実がほぼ判明した(原告が造園業に係る所得しか確定申告をしていないことは、当事者間に争いがない。)。そこで、浅川忠良らは、原告の所得を調査するため、昭和四三年一〇月一五日、原告方事務所で、原告が不在だつたので、事務員に関係書類の提示を求めたところ、昭和四一年、昭和四二年の造園関係の売上帳四冊、同見積書三冊、請求書控、領収書控の提出を受けただけで、別荘地分譲関係の帳簿はなく、造園関係の売上帳についても昭和四一年五月以前の分は記帳してなかつたので、買受人等の反面調査等を進めた(昭和四一年二月に本件山林を千代田興業に転売したことは、当事者間に争いがない。)。そして、浅川忠良らは、原告に事実を確認するために連絡したが、これに応ぜず、原告が昭和四四年一月、修正確定申告のため中之条税務署を訪れた際、浅川忠良が前記判明している事実を確認したところ、これを認めたが、別荘地分譲の代金等の詳細については協力が得られなかつた。

右認定事実からすると、被告が本件各更正決定に際し別荘地分譲の買受先等の反面調査によつて把握した原告の収入金額を基礎に販売原価及び営業費用を推計により算出したことは、妥当であると解せられる。

2  昭和四一年分の所得金額について

原告が、昭和四一年において、造園業を営むとともに別荘地の分譲転売の業務を行なつていたこと、本件山林を千代田興業に代金一三〇〇万円で転売したこと、その転売代金について遅延利息を受け取つたことは、当事者間に争いがないから、昭和四一年分の所得は、事業所得で別表1の項目のとおりであることが認められる。そこで、同項目に従つて事業所得金額を検討する。

(一)  別表1の順号〈2〉の造園業収入について

証人浅川忠良の証言並びに右証言により真正に成立したと認められる乙第一号証の二及び同号証の四によれば、原告の昭和四一年の造園関係の売上帳は六月から一二月までの分が記帳され、収入金額は右各乙号証の記載のとおりであること、右各乙号証の記載の金額の合計額は二六二万六三〇〇円であることが認められる(被告の主張額は二五六万八六五〇円であるが、これは乙第一号証の四にある川口工業分の五万七六五〇円の加算が落ちているためであると認められるので、被告の主張額を超えて前記のとおり認定した。)。なお、右各乙号証は鉛筆で書かれているが、そのことは前記認定を左右するものではない。

ところで、右証言によれば、原告は、昭和四一年は一月から五月までの間も造園業を営んでいたことが認められるが、被告はその間の造園の工事先を反面調査することができなかつたことが認められ、その間の収入については適当な資料が提出されていない。

従つて、昭和四一年分の造園業収入金額は前記二六二万六三〇〇円と認めるのが相当である。

(二)  別表1の順号〈3〉の別荘地分譲収入について

原告が別荘地を分譲した真正の契約書及び帳簿等を作成していないことは、前記二の1認定のとおりであり、証人浅川忠良の証言によれば、被告は、昭和四一年に原告から別荘地を買い受けた者の反面調査を行なつて、その結果が別表2であることが認められる。同表の順号〈3〉ないし〈8〉、〈10〉ないし〈13〉の欄はすべて、〈1〉、〈2〉、〈9〉、〈14〉の欄は買受人氏名、契約金額及び地積については、当事者間に争いがない。

そこで、別表2の順号〈1〉、〈2〉、〈9〉及び〈14〉の中島玉雄、桜井臣治、白坂政治及び唐沢治郎につき、原告主張の別表12のとおり値引をしたか否かについて検討する。

証人江崎弘及び原告本人は値引をした旨供述しているが、右各供述は具体的に買受人氏名を明らかにせずに分譲に際して値引したというもので、これらから前記各人について値引があつたと認めることは相当でなく、また、原告の主張に沿う甲第二号証及び同第四号証の二は、証人江崎弘及び同神戸博の各証言並びに原告本人尋問の結果に照らし考えても、いかなる資料に基づいて作成したのか明らかではないから、これから前記各人について値引があつたと認めることもできず、他に右値引を認めるに足る証拠はない。なお、原告本人は、値引等についてこれを証明する書類があつたのであるが、すべて被告に提出してあり、いまだに返却されていない旨供述しているが、証人浅川忠良の証言と対比して考えると、右供述は措信しがたい(このことは、後記仲介手数料についても同様である。)。かえつて、証人柴崎昇三の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第七号証の一、二、四、五によれば、前記各人については、いずれも値引きがなく、買受代金額は別表2の契約金額欄記載の金額のままであることが認められる。

従つて、昭和四一年の別荘地分譲収入金額は、別表2の差引収入金額欄の合計の一八五万三三〇〇円であると認められる。

(三)  別表1の順号〈4〉の別荘用地転売収入について

本件山林を千代田興業に代金一三〇〇万円で転売したことは、既に認定したとおり当事者間に争いがない。

ところで、原告は、千代田興業から転売代金を手形で支払われ、この手形を割引いた際に、割引料として一四万二三二〇円を差引かれているから収入金額も右金額を差引くべきであると主張し、これに沿う甲第四号証の二があるが、これは前記のとおりいかなる資料に基づいて作成したのか明らかでないから信用できず、他に右主張を認めるべき証拠はないので、右主張は認めることができない。

(四)  別表1の順号〈6〉の造園業関係販売原価について

証人浅川忠良の証言及び弁論の全趣旨によれば、原告は、造園業関係の経費帳を作成せず、領収書も満足に保管していないこと、営業の実態は、昭和四一年と昭和四二年ではほとんど差異がないことが認められるので、昭和四二年の造園業関係販売原価率から昭和四一年の造園業関係販売原価を推計することには合理性がある。

そこで、昭和四二年の造園業関係販売原価率について考える。昭和四二年の造園業収入金額は後記3の(一)認定のとおり一三五一万〇五七五円であり、同年の造園業関係販売原価が三九七万四〇四一円であることは、後記3の(三)認定のとおり当事者間に争いがない。そうすると、昭和四二年の造園業関係販売原価率は次の算式のとおりとなり、原告に有利なように少数点以下を切り上げると、三〇パーセントとなる。

〈省略〉

従つて、昭和四一年の造園業関係販売原価は、次の算式のとおりであり、原告の有利なように一〇〇〇円未満の端数を切り上げると七七万一〇〇〇円となる。

昭和41年の造園業関係販売原価の額=昭和41年の造園業関係収入金額×昭和42年の

造園業関係販売原価率=2,568,650×30=770,595

(五)  別表1の順号〈7〉の別荘地分譲関係販売原価について

別荘地分譲関係の販売原価が八七〇万三六九四円であることは、当事者間に争いがない。

(六)  別表1の順号〈8〉の別荘用地転売関係販売原価について

(1) まず、土地の取得価額について考える。

証人浅川忠良の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第四号証、証人小高佐太郎の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第三号証の一並びに成立に争いのない乙第三号証の二によれば、原告は、昭和四一年一月一三日、長野原町応桑第九区から本件山林を代金八五〇万円で買い受けたことが認められる。

なお、原告は、同区に対し水利権料と思われる一〇〇万円を支払つているから、本件山林の買入価額は九五〇万円であると主張し、これに沿う甲第四号証の二があるが、これが信用しがたいことは前記のとおりであり、他に右主張を認めるべき証拠はないので、右主張は認めることができない。

そして、証人大塚弘の証言及び右証言により原本が存在し真正に成立したと認められる乙第五号証によれば、原告は、昭和四一年において、太陽銀行小諸支店から手形貸付を受けて右貸付の利息として二三万〇二七六円を支払つたことが認められる(乙第五号証の昭和四一年一二月二九日欄の支払利息は一万四六四〇円であるが、利息計算期間が同日から昭和四二年二月二七日までの六一日間であるので、按分すると昭和四一年分は七二〇円となる。また、同号証の昭和四〇年一一月二九日欄及び同年一二月二三日欄は、いずれも昭和四〇年分及び昭和四一年分に渡つており、この利息も正確には按分すべきであるが、被告がほとんど昭和四〇年度分について支払つたものであるとして全額を算入していないので、算入しない。)。ただし、右貸付が別荘用地の取得のためであるかその他の目的であるかを判断できる証拠はない。しかし、右貸付が原告の事業のために使用された事実は推認できるので、いずれであつたとしても、右貸付の利息を損金として計上できるので、計算の便宜上右貸付は別荘用の取得のためであることにし、右貸付の利息を土地の取得価額に算入する。

従つて、土地取得価額は八七三万〇二七六円と認められる。

(2) 造成費用が二九三万〇六五〇円であることは、当事者間に争いがない。

(3) そうすると、別荘用地転売関係販売原価は一一六六万〇九二六円となる。

(七)  別表1の順号〈10〉の営業費用について

(1) まず、造園業関係の費用について考える。

証人浅川忠良の証言によれば、原告は昭和四一年の造園業関係の費用の領収書を完全に保管していないことが認められ、また、前記のとおり原告の営業形態は昭和四一年と昭和四二年とでは差異はないから、昭和四二年の造園業関係営業経費率から昭和四一年造園業関係営業費用を推計することには合理性がある。

そこで、昭和四二年の造園業関係営業経費率を算出する。昭和四二年の造園業収入金額は後記3の(一)認定のとおり一三五一万〇五七円である。昭和四二年の営業費用は3の(五)認定のとおり一二九八万九七一一円であり、弁論の全趣旨により右営業費用のうち仲介手数料一二三万円、接待交際費のうちの一六八万七一七五円及び広告宣伝費のうちの三二万六五五〇円は別荘地分譲関係の営業費用と認められるので、右合計額三二四万三七二五円を前記一二九八万九七一一円から控除した九七四万五九八六円が昭和四二年の造園業関係営業費用である。そうすると、昭和四二年の造園関係営業経費率は次の算式のとおりとなり、原告に有利なように少数点以下を切り捨てると七二パーセントとなる。

〈省略〉

従つて、昭和四一年の造園業関係営業費用の額は次の算式のとおりとなり、原告に有利なように一〇〇〇円未満の端数を切り上げると一八五万円になる。

昭和41年の造園業関係営業費用の額=昭和41年の造園業収入金額×昭和42年の

造園業関係営業経費率=2,568,650×72=1,849,428

(2) 次に、別荘地分譲関係の営業費用について考える。

証人浅川忠良の証言及び弁論の全趣旨によれば、原告は、広告宣伝費として一八万七八六〇円、接待交際費として分譲地坪当り一五五円であると被告に申し立てたこと、原告は昭和四一年において仲介手数料は支払つていないこと、右接待交際費の額は仲介手数料の意味も含んだものとすれば、そのころとしては妥当なものであることが認められる。なお、原告は、別表12記載のとおり仲介手数料を支払つたと主張し、これに沿う証人江崎弘及び同神戸博の各証言並びに原告本人尋間の結果があるが、これらはいずれも明確ではないので、にわかに信用できず、また、同じくこれに沿う甲第二号証も前記のとおりいかなる資料に基づいて作成したのか明確でないから信用できず、他に右主張を認めるべき証拠はないので、右主張は認めることができない。接待交際費の算式は次のとおりである(分譲地積については、当事者間に争いがない。)。

接待交際費=分譲地債(坪)×単価=6,262×155=970,610

従つて、別荘地分譲関係の営業費用は、原告の申し立てた広告宣伝費と接待交際費の額の合計一一五万八四七〇円であると認めることができる。

(3) 証人浅川忠良の証言によれば、原告は、本件山林の転売について仲介料等の経費を支払つていないことが認められるので、別荘用地転売関係の営業費用は零である。

(4) そうすると、営業費用は、造園業関係と別荘地分譲関係の合計額である三〇〇万八四〇円となる。

(八)  別表1の順号〈11〉の雑収入について

雑収入が八七万四〇〇〇円であることは、当事者間に争いがない。

(九)  以上のとおりであるから、昭和四一年分の事業所得金額は、別表1につき順号〈1〉の収入金額を三四一五万九三〇〇円、〈2〉の造園業収入を二六二万六三〇〇円、〈9〉の差益金額を一三〇二万三六八〇円、〈12〉の所得金額を一〇八八万九二一〇円と訂正したもので、一〇八八万九二一〇円である。

3  昭和四二年分の所得金額について

原告が、昭和四二年において、造園業を営むとともに別荘地の分譲の業務を行なつていたこと、雑所得があつたことは、当事者に争いがなく、昭和四二年分の所得金額は事業所得金額、給与所得金額及び雑所得金額の合計額となり、事業所得の項目は別表5の項目のとおりであることが認められる。そこで、同項目に従つて事業所得の金額を検討し、所得金額を算出する。

(一)  別表5の順号〈2〉の造園業収入について

証人浅川忠良の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第一号証の一及び六によれば、原告の昭和四二年の造園業関係の収入のうち売上帳に計上されているものは合計一二六二万七八二五円であることが認められ、証人浅川忠良の証言中には調査中に計算を誤まり一二六二万七八四五円が正しいとの部分があるが計算の誤りの根拠が不明なので右部分は採用できず、他に前記認定を覆えすに足りる証拠はない。さらに、前記乙第一号証の一、証人浅川忠良の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第一号証の七、八によれば、別表6の順号〈1〉ないし〈11〉及び〈13〉、〈14〉の各売上合計八二万七七五〇円(別表6の順号〈12〉の売上は前記各証拠によれば売上帳に記帳されていることが認められる。)並びに土ヤ分一万円及び斉藤分四万五〇〇〇円の各売上合計五万五〇〇〇円が売上帳から計上洩れとなつていることが認められ、計上洩れの売上の合計は八八万二七五〇円である。そこで、昭和四二年の造園業関係の収入は、売上帳に計上されている一二六二万七八二五円と計上洩れの八八万二七五〇円の合計額である一三五一万〇五七五円であると認められる(右認定によると、売上帳に記帳されている金額は被告の主帳額より二〇円低額であるが、計上洩れの金額は被告の主張割より四〇〇円高額であり、結局、造園業関係の収入としては被告の主張額より三八〇円高額になつている。)。

(二)  別表5の順号〈3〉の別荘地分譲収入について

前記のとおり原告は別荘地分譲の真正な契約書及び帳簿等を作成しておらず、証人浅川忠良の証言によれば、被告は、昭和四二年に原告から別荘地を買い受けた者の反面調査を行なつて、その結果が別表7のとおりであることが認められる。同表の順号〈2〉、〈6〉、〈7〉、〈10〉、〈12〉、〈14〉、〈16〉の欄はすべて、〈1〉、〈3〉ないし〈5〉、〈8〉、〈9〉、〈13〉の欄は買受人氏名、契約金額及び地積について、〈11〉の欄は買受人氏名、値引額及び地積については、当事者間に争いがない。

ところで、証人浅川忠良の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第二二号証によれば、別表7の順号〈11〉の吾妻商事株式会社の契約金額は三〇〇万円であることが認められ、また、証人田中英興の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第七号証の九によれば、同表の順号〈15〉については、田中利夫が同人の長女の田中ゆり子の名前で原告から八五二・八九平方メートル(二五八坪)を契約金額七七万四〇〇〇円、値引額二七万四〇〇〇円で買受けたことが認められる。さらに、証人柴崎昇三の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第七号証の七、八によれば、別表7の順号〈8〉の須永利及び順号〈9〉の中沢節子についてはいずれも値引額が一〇〇〇円であつたことが認められ、また、前記乙第七号証の四及び同第二二号証、証人浅川忠良の証言、証人兼形進の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第一〇号証の一、二、証人柴崎昇三の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第七号証の六並びに証人藤井一雄の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第八号証によれば、別表7の順号〈1〉の細谷刀雄、順号〈3〉の白石政治、順号〈4〉の二ノ宮伊一郎、順号〈5〉の室村善吾、順号〈13〉の山本宣満については、いずれも値引きがなかつたことが認められる。

これらの点に関し、原告は別表13のとおりであると主張し(別表13の順号〈6〉の田中ゆう子は、既に認定したところと合わせると、被告主張の別表7の順号〈15〉の田中利夫に該当すると認められる。)、右主張に沿う甲第三号証があるが、甲第三号証が信用しがたいのは前記のとおりであり、特に値引については、証人江崎弘及び原告本人が値引をした旨述べているが、右各供述はいずれも明確ではないので採用しがたく、他に右主張を認めるべき証拠はない。

従つて、別荘地分譲収入は、別表7の差引収入金額欄の合計金額の二八五二万四五〇〇円であると認められる。

(三)  別表5の順号〈5〉の造園業関係販売原価について

造園業関係販売原価が三九七万四〇四一円であることは、当事者間に争いがない。

(四)  別表5の順号〈6〉の別荘分譲関係販売原価について

証人浅川忠良及び同横沢啓太郎の各証言並びに右各証言により真正に成立したと認められる乙第六号証によれば、原告が横沢啓太郎より買い受けた代金は分譲地積一坪当り一〇〇〇円であることが認められ、分譲地積が一万〇八八五坪であることは当事者間に争いがないので、別荘地分譲の土地の取得価額の算式は、次のとおりとなる。

土地の取得価額=分譲地積×単価=10,885×1,000=10,885,000

分譲別荘地の造成に要した費用が四〇〇万〇六六五円であることは、当事者間に争いがない。

従つて、別荘分譲地関係の販売原価は一四八八万五六六五円となる。

(五)  別表5の順号〈8〉の営業費用について

被告主張の営業費用の内訳の別表10は、順号〈1〉の仲介手数料の金額を除き、当事者間に争いがない。

証人浅川忠良の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第一九ないし二一号証によれば、原告は別表11のとおり合計一二三万円の仲介手数料を支払つたことが認められる(乙第一九号証は、領収証で土地代金と記載されているが、証人浅川忠良の証言によれば、当時、原告と安斉友義及び丸山袈裟雄との間で土地の売買はなかつたことが認められるので、同号証は土地代金ではなく仲介手数料の領収書であると認められる。)。

ところで、原告は、別表13記載のとおり仲介手数料を支払つたと主張し、これに沿うかのような証人江崎弘及び同神戸博の各証言並びに原告本人尋問の結果があるが、これらはいずれも措信しがたく、また、甲第三号証があるが、これも信用しがたいことは前記のとおりである。なお、甲第五号証は新居文作名義の一六六万円の領収書があるが、証人新居文作の証言によれば、これは仲介手数料の領収書ではないことが認められる。かえつて、証人浅川忠良の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第二四号証、証人坪木喬の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第一四号証、証人浦部治郎の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第一三号証の一、二、証人小高佐太郎の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第一一、一二号証並びに証人兼形進の証言及び右証言により真正に成立したと認められる乙第一七号証の一、二によれば、別表11に記載のない内山八郎、田中利夫、中島一郎及び山本宣満らは仲介手数料をもらつていないことが認められる。

従つて、仲介手数料は前記認定の一二三万円である。そうすると、営業費用は一二九八万九七一一円となる。

(六)  以上のとおりであるから、昭和四二年分の事業所得の金額は別表5につき順号〈1〉の収入金額を四二〇三万五〇七五円、〈2〉の造園業収入を一三五一万〇五七五円、〈7〉の差益金額を二三一七万五三六九円、〈9〉の所得金額を一〇一八万五六五八円と訂正したもので、一〇一八万五六五八円である。

(七)  給与所得について

給与所得が四万八〇〇〇円であることは、当事者間に争いがない。

(八)  雑所得について

雑所得が二七〇〇円であることは、当事者間に争いがない。

(九)  よつて、昭和四二年分の所得金額は、前記事業所得、給与所得及び雑所得の合計で、一〇二三万六三五八円である。

4  前記認定のとおり、原告の昭和四一年及び昭和四二年の各年分の所得金額は、それぞれ一〇八八万九二一〇円、一〇二三万六三五八円であるから、その範囲内の所得を基礎としてされた本件各更正決定及び昭和四一年分の過少申告加算税の賦課決定には原告主張のような違法がない。

5  各重加算税の賦課決定について

前記二の1で認定した事実によれば、原告は、所得の一部を隠ぺいし、隠ぺいしたところに基づいて確定申告、修正確定申告をしたものであるから、これは国税通則法六八条一項に該当する。従つて、各重加算税の賦課決定には原告主張のような違法がない。

三、以上の次第であるから、本訴請求はいずれも理由がないので棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 大島崇志 裁判官 本間栄一 裁判長裁判官川名秀雄は、退官につき、署名擦印することができない。裁判官 大島崇志)

別表1

〈省略〉

別表2

〈省略〉

別表3

〈省略〉

別表4

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別表5

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別表6

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別表7

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別表8

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別表9

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別表10

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別表11

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別表12

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別表13

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